□ 那須政玄・野尻英一 編『哲学の戦場』
哲学において戦場はどこにあるのか、どこかに戦場があるならばいったい何と戦うのか。ヘーゲル、ヘルダーリン、モーツァルト、ニーチェ、ハイデッガー、南方熊楠、自閉症、カント――斯界気鋭の学究がいどむ哲学最内奥の中心点。論文八本。
〈内容〉
・野尻英一(大阪大学准教授)「未来の記憶――哲学の起源とヘーゲルの構想力についての断章」
・加藤直克(自治医科大学名誉教授)「ヘルダーリン『ヒュペーリオン』を読むということ」
・中尾健二(静岡大学名誉教授)「モーツァルトのオペラにみる近代」
・髙橋明彦(上智大学教授)「アリアドネは歎く――詩人としてのニーチェ?」
・三浦仁士(介護福祉士)「自閉症スペクトラムの存在分節」
・唐澤太輔(龍谷大学博士研究員)「虚空と風――南方熊楠の「場所」をめぐって」
・相川翼(高等学校講師)「自閉症の哲学的考察による「人間」観の再考」
・那須政玄(早稲田大学名誉教授)「「自然」の取戻し――カント『判断力批判』の読み方」
〔2018年8月、A5判上製、448頁、本体3800円〕
□ 仲島陽一『哲学史』
始祖タレスから2600年――。古代ギリシャからポストモダンまで、人生と世界についての根本的な考察、その多様な表れをうけとめる。
〈内容〉序論/初期ギリシャ哲学/ソフィストとソクラテス/プラトン/アリストテレス/後期古代哲学/キリスト教の成立/中世の哲学/ルネッサンスと宗教改革/科学革命とベーコン/デカルト/パスカル/ホッブズとロック/デカルト以後の合理論/バークリとヒューム/フランス啓蒙思想/カント/ヘーゲル/キルケゴールとフォイエルバッハ/マルクス/ニーチェ/フッサールとハイデガー/20世紀の哲学思想
〔2018年4月、四六判上製、348頁、本体2500円〕
□ 那須政玄『闇への論理――カントからシェリングへ』
カントが『判断力批判』において躊躇しつつ企図した「生きた自然」の復権は、見事、シェリング『人間的自由の本質』へと受け継がれることに。「われわれは文字で書かれたどんな啓示よりも古い啓示をもっている。それは自然である」(シェリング)。
〈内容〉1. カントの構想力/2. カント『判断力批判』における反省的判断力としての構想力/3. 自然哲学の本質――シェリング理解のための助走/4. シェリング『自由論』の解明
〔2012年10月、A5判上製、268頁、本体3000円〕
□ 照屋佳男『社会の再発見と社会の防衛』
「生きた社会、或いは共同体は、その本質部分に、時代の新旧とは本来無関係の「非」近代的なものを蔵してゐるのである」(著者はしがき)。
〈内容〉1. 思想と感情/2. 青春と習俗/3. 自己表現を亡ぼすもの/4. 自然の秩序の転倒/5. 社会の再発見/6. 国家と社会との両立について/7. 共同体と「経済主義的偏見」/8. 中間的組織とグローバル自由市場
〔2007年1月、四六判上製、298頁、本体2800円〕
□ ヤスパース,K『シェリング』(那須政玄・山本冬樹・高橋章仁 訳)
没後160年余、哲学史上つねにヘーゲルの盛名の引き立て役として貶められてきた一人の天才の「偉大さと宿命」とは。その生い立ちから作品世界の哲学まで、実存哲学が開明する。1955年上梓の本邦初訳。
〈内容〉1. シェリングの人格と著作/2. シェリングにとって哲学は何を意味するのか/3. 存在の思惟/4. シェリング哲学の本質への問い/5. 諸力と歴史との空間の中のシェリング
〔2006年10月、A5判上製、512頁、本体5800円〕
□ 高柳俊哉『中江藤樹の生涯と思想――藤樹学の現代的意義』
「思ひきやつらくうかりし世の中を 学びて安く楽んとは」――日本陽明学の祖とされる藤樹の、その孤高を持する立論と実践は、単なる正統朱子学の異域としての評価を超え、逡巡迷走するいまを生きぬく「道」を指し示す。
〈内容〉1. 生涯と著作/2. 江戸初期の儒教/3.「天」について/4.『中庸』の解釈について/5. 孝論について/6. 教育思想/7. 藤樹学の普遍性/補1. 教科書に現われた藤樹/補2. The Philosophy of Responsibility/略年譜
〔2004年10月、A5判上製、260頁、本体2800円〕
□ 田村正勝『見える自然と見えない自然――環境保護・自然の権利・自然哲学』
やむことのない破壊の暴威に対して、山や川は原告たりうるか。まさにいま、環境保護の哲学的基礎づけが求められる。草や木の声なき声を聞く「自然哲学」のこころみ。「自然は賢しらな者を軽蔑し、ちからに充ちた者、真に純一な者にのみ自らを顕わし、その秘密をうちあける」(ゲーテ)。
〈内容〉1. 環境権と自然哲学――「自然の権利」の哲学的基礎づけ/2. ドイツ自然哲学――シェリングの自然観をめぐって/3. 自然観と技術観/補. ローカル通貨と自然哲学
〔2001年11月、四六判上製、284頁、本体2600円〕
□ 古賀勝次郎『近代日本の社会科学者たち』
幕末以降、「西洋」の血肉化に専心した先賢十六人。その軌跡を辿り、彼らの思想にひそむ葛藤を明らかにする。そこに共通してみられるのは初発の苦悩といっていい。
〈内容〉1. 明六社の思想家たち(阪谷素、西村茂樹、津田真道、西周と加藤弘之、中村正直、福沢諭吉)/2. 田口卯吉/3. 穂積陳重/4. 鵜澤総明と穂積重遠/5. 高田保馬と山本勝市/6. 長谷川如是閑と石橋湛山/7. 小野清一郎
〔2001年6月、四六判上製、386頁、本体2800円〕
□ 冨永厚 編『仏蘭西の思想と倫理』
見えないものを見えないもののままに見えるようにすること。そのまなざしは伝統の桎梏をくぐり抜け、「存在の彼方」を凝視する。表現・他者・倫理をめぐる論文15篇。
〔2001年3月、A5判上製、272頁、本体2800円〕
□ ビーチャム,T・L『生命医学倫理のフロンティア』(立木教夫・永安幸正 監訳)
現代バイオエシックスの基本的文献『生命医学倫理』の著者が、一般的歴史的な関心、原理を基礎とした取り組みの今日に至る経緯、起こり得べき議論を先取りした新展開、その最先端領域に見られる具体的な問題をレクチャーする。
〈内容〉1. 現代の生命医学倫理/2. 生命医学倫理の四つの基本原理/3. 原理に基づく倫理の新展開/4. 個人主義、自律、組織、臓器の移植/5. 生命医学倫理のフロンティア
〔1999年10月、四六判上製、186頁、本体1800円〕
□ 古賀勝次郎『ヒューム社会科学の基礎』
複雑で重厚な学問体系を大胆に解剖。西洋精神史上に独自の位置を占める思想の全貌と、その現代的意義を明らかにする。内外に誇るべき画期的業績。
〈内容〉1. 西洋における「自然」概念の変遷/2. ヒューム社会科学の先駆者達/3. ヒュームの情念論/4. ヒュームの道徳論/5. スミスの道徳感情論/補 デカルト、ヴィーコ、ヒューム
〔1999年7月、四六判上製、428頁、本体3000円〕
□ シャロン,J『死と西洋思想』(田中克佳・松丸修三・森野衞・諏訪内敬司・山本正身 訳)
慰安力を失った宗教と科学主義への懐疑、消費され続けるのみの現代の生にいや増す不安。――「死」を等身大に蘇生させようとする哲人たちの闘いの足跡。
〈内容〉神話/古代(ソクラテス以前、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、エピクロス、ストア主義:セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス)/キリスト教/ルネサンス(モンテーニュ、ブルーノ)/近代(デカルト、パスカル、スピノザ、ライプニッツ、18世紀、カント、ヘーゲル、ロマン主義、ショーペンハウアー、フォイエルバッハ、ニーチェ)/現代(ベルグソン、クラーゲス、ジンメル、シェーラー、ホワイトヘッド、実存主義:ヤスパース、ハイデッガー、サルトル、マルセル)
〔1999年4月、A5判上製、420頁、本体3800円〕
□ 掛下栄一郎・冨永厚 編『仏蘭西の智慧と藝術』
独特の伝統と奥深い文化を背景とする思想の先端的な営み――フランスの哲学および美学・芸術のなかに脈々と生き続ける強靱な精神をあらためて考察する。論文21篇収録。
〔1994年9月、A5判上製、402頁、品切〕
□ 小野紀明『現象学と政治――二十世紀ドイツ精神史研究』
ロマン主義の蒔いた種子がその後どのように結実したかを、二十世紀ドイツ現象学運動の中に探ると共に、現象学とファシズムとの間の微妙な関係を解明しようとする。
〈内容〉1. 構成するということ/2. 新カント派と自由主義の凋落(カッシーラー)/3. 共同存在か、単独者か(シェーラー)/4. 美的形式と政治的秩序化(ユンガー)/補 二十世紀美術における構成問題/5. 政治の存在論(アレント)
〔1994年8月、A5判上製、444頁、品切〕
□ 古賀勝次郎『ヒューム体系の哲学的基礎』
現代の自由主義者の思想的対立は、起源を辿れば古典自由主義に行きつく。その再検討のために、他に比してより体系的かつ斉合的なヒュームの思想は魅力的である。
〈内容〉1. ヒュームのキリスト教神学批判/2. ヒュームの知覚論/3. 経験論的因果論/4. 懐疑主義と自然主義/5. 道徳哲学方法論/補 自由主義と宗教の問題
〔1994年6月、四六判上製、286頁、本体2524円〕
□ 経済学研究会 編『近代の超克――難波田春夫輯遺』
噴出する経済社会の矛盾にいかに処すべきか。近代的思惟の迷妄を衝き、人間の傲りと偏見を剥ぐ「実在の論理」をやさしく説いて、来るべき時代の根本原理を示す。
〔1992年9月、四六判上製、500頁、品切〕
□ 那須政玄『結界と虚界――生の基層へ/哲学的断片』
禁断の言葉が「無」を切り裂く。「質的飛躍」に襲われたアダムとエバ。本書は、ひたすらに自己の在処を探りつつ、人間そのものを実感しようとする新しい学の試みである。
「わたしは、哲学とは「真のカオス」を見出そうとする営為であり、しかしまた結局は、われわれが人間であるかぎり、それが不可能であることを明らかにする営為であるとも考えている。ヘーゲルは「ミネルヴァのふくろうは、迫り来る夕闇とともにようやく飛びはじめる」と語った。どうも時代の盛衰と哲学とは反比例の関係にあるようだ。時代の隆盛は、カオスを見なくてもいいようにわれわれを導くし、その没落は、その時代を反省するためにカオスからの思考をわれわれに促す。しかし、われわれが語りうる「カオス」は、そのつど文化的に規定されたカオスであるにすぎない。哲学は、その基底においては、このカオスの文化規定性を看破しつつ、翻ってまた「真のカオス」に達することができない人間存在(人間の在り方)を反省的に繰り返し問いつづける。わたしは、このような営為にこそ哲学の存在理由があると思っている」(著者)。
〈内容〉1. 事柄の本質に至るための前置き/2.「隠れていること・隠されていること」の意義/3. 超越について/4. 異常の構造/5. 不安について/6. ヘーゲルの意識論/7. 結界と虚界
〔1992年6月、A5判上製、318頁、本体3500円〕
□ ツィントル,R『ハイエクとブキャナン――個人主義秩序理論の再検討』(井上孝・古賀勝次郎・中島正人 訳)
二人の知的関心領域は広範にわたるが、その政治哲学は現実適応性と将来の発展性において他を凌ぐ。両巨人の秩序理論を内在的に検討し、問題点を克服しようとする。
〈内容〉1. 基本的考察/2. 個人選好に基づいた秩序構想の構築/3. 個人的自由という基準の下での秩序構想の構築/4. 結語
〔1991年8月、四六判上製、420頁、品切〕
□ 小野紀明『精神史としての政治思想史――近代的政治思想成立の認識論的基礎』
マキャヴェリ、ホッブズらの政治思想に、彼らの生きた時代の精神的雰囲気(クリマ)がどのように反映しているか、その内的関連を解明し、近代的世界観の成立過程を跡づける。
〈内容〉序 方法論についての若干の考察/1. 近代的世界観の胚胎/2. 近代的世界観の胎動/3. 近代的世界観の誕生/結 経験主義の登場による近代的世界観の新たな展開
〔1988年11月、A5判上製、418頁、品切〕
□ ペルチンスキー,Z・A、グレイ,J 編『自由論の系譜――政治哲学における自由の観念』(飯島昇藏・千葉眞 訳者代表)
古代ギリシアからアーレント、ロールズ、ハーバーマスまでの主要思想家16人の「自由」観を再検討する本書の試みは、すぐれて現代的かつ実践的な意味を持つ。
〈内容〉古代ギリシアにおける自由/ホッブズ/スピノザ/ロック/ルソー/カント/フィヒテ/ヘーゲル/ミル/マルクス/グリーン/ハイエク/オークショット/バーリン/アーレント/ロールズ/ハーバーマス
〔1987年5月、四六判上製、536頁、本体4000円〕
□ 藤原保信『大学の責任と政治学の責任と』
学問への姿勢はどうあるべきか。若者の真摯さに向ける著者の、内発の声を集めた。
〈内容〉1. 大学はこれでよいのか/2.「政治哲学の復権」をめぐって/3. 政治学の倫理的責任/4. 大山郁夫論/5. 政治哲学の現在
〔1987年4月、四六判上製、160頁、品切〕
□ アザール,P『十八世紀ヨーロッパ思想――モンテスキューからレッシングへ』(小笠原弘親・小野紀明・川合清隆・山本周次・米原謙 訳)
啓蒙と合理――哲学・宗教・文学から巷間の風俗流行にいたるまでの重層的な精神活動の総体を、広範な視野をもって平易かつ雄弁に描きつくす、思想史研究の古典。
〈内容〉1. 裁かれるキリスト教/2. 人間の国/3. 崩壊/結 ヨーロッパと偽りのヨーロッパ
〔1987年1月、四六判上製、544頁、本体3500円〕
□ 田村正勝『社会科学のための哲学』
すでにひさしく、ひとはみな飽食暖衣しながらも、不安におののいている。一体世の中はどうなるのか。高度成長を謳歌してきた経済学はもちろんのこと、すべての社会科学はこの問いに答えることができない。かくして一切が根本から問い直さるべきときである。本書はこの課題に真正面から取り組んだ著者渾身の力作である。
〈内容〉1. 思想と科学/2. 自然・人間・技術/3. 社会と国家/補 社会科学の方法
〔1986年6月、A5判上製、444頁、本体4000円〕
□ 照屋佳男『ジョージ・オーウェル――文學と政治』
「筆者のような自立精神の持ち主の登場こそわが英文学界のもっとも歓迎すべき現象である」(1986年版『英語年鑑』研究社)。『ビルマの日々』から『1984年』まで、代表作品を論じて新境地を拓く。
〈内容〉1. イギリス中産階級の衰退/2. 生の悲劇的意義/3. 金銭への適応/4. 狭い世界、広い過去/5. 文学と政治のはざまで/6. 自由と枠組/終 『1984年』と全体主義
〔1986年5月、四六判上製、284頁、品切〕
□ グレイ,J『ハイエクの自由論〈増補〉』(照屋佳男・古賀勝次郎 訳)
自発的社会秩序とは何か――人間社会のあらゆる分野に根強くはびこる設計主義的思考を断固排した「自由」の原理。その強靱な自由思想を明晰、簡潔に解き明かす。
〔1989年9月、四六判上製、318頁、品切〕
□ 古賀勝次郎『ハイエク経済学の周辺』
ケインズ経済学への不信、現代の民主主義に対する幻滅に加えて、彼の社会主義批判が正鵠を射たものであったことが、ハイエク再評価を生む――十有余年の研究余滴。
〔1985年6月、四六判上製、368頁、品切〕
□ 菊池昌實『漱石の孤独――近代的自我の行方』
漱石の孤独は、近代化が日本人にもたらした自我の混乱を反映している。自立しつつ、他を攻撃、侵略しない個を求めてさまよった漱石の存在は、いま、われわれ自身の問題として正確にとらえてゆかねばならない。
〔1984年6月、四六判上製、224頁、品切〕
□ 浅沼圭二『不在の光景――映画についての/による断章』
芸術の現代的状況に対する美学的考察として、さらには現代の精神的風土に関する思索の書。
〔1983年12月、A5判上製、314頁、品切〕
□ 古賀勝次郎『ハイエクと新自由主義――ハイエクの政治経済学研究』
M. ヴェーバー以来、「体系」といったものを持つことができたほとんど唯一の社会科学者ハイエクの、法と政治と経済を貫く「新自由主義」の全体像を描きつくす。
〈内容〉1. 現代社会科学とハイエク/2. ハイエクと新自由主義/3. 国民経済と世界経済
〔1983年11月、A5判上製、414頁、本体3800円〕
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